未来圏からの風@池澤夏樹。

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なんとも脈絡のない旅をすることになった。

そんな冒頭の一文から始まる紀行文をまとめた一冊です。
著者の池澤夏樹さんはヒマラヤ・アラスカ・バリ・沖縄を巡ります。
その旅の中でダライラマ・星野道夫などの著名人と会って、
いろんな思索の会話をします。

    ☆

僕はこの本の大部分を、
家ではない真夜中の静かな広い部屋で読みました。

テレビもない、
パソコンもない、
他にすることのない環境というのは、
しかも真夜中の静かな場所というものは、
読書に集中するのにはいいものでした。


思えば昔の人は、常にそういう環境だったのかも知れないとふと思いました。
いわゆるそういう「余計なもの」がないということ。
そういう意味ではなんでもできて、
いろんな情報を得ることのできる今の環境というのは、
物事をゆっくり考える環境を、
わざわざ作らなければならないということなのかも知れません。
誰かが言った言葉かも知れませんが、
人は本当の意味で「考える」ということをしなくなりつつあるのかも知れません。

情報を集めて知ったような考えたような感じになる。

  ☆

この旅の最後は沖縄です。
池澤さんは言います。

沖縄にはまだ変わらないものが多くある。
まして離島に行けば、
日差しや風や潮の動きや木々の茂りかたは昔と変わらない。
そういう土地である。


そして旅を終えた池澤さんは、
沖縄で旅の余韻を残すようにぼーとしていた。
それが東京だったら無理だったと。

またこの本には、
垂見健吾さんの写真がたくさん載せてあります。
その写真の一葉一葉がまた、
旅行記の写真という意味合い以上に、
紀行文に深みと広がりを与えていました。

僕は最近、紀行文ばかり読んでいます。
観光地巡りの珍道中の本も楽しいものですが、
そういうものではなく、
その土地のその土地ならではの見聞から、
何かを得ては何かを感じていく。
そういうものをまとめた紀行文。

この「未来圏からの風」という本は、
まさにそういう一冊だったと思います。






未来圏からの風

池澤夏樹(文)
垂見健吾(写真)

出版社 パルコ出版
発売日 1996年05月





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